研究テーマ

情報通信ネットワークの基盤技術やネットワークを使ったアプリケーションの研究に取り組んでいます.ネットワーク基盤技術は「ネットワーク自体」を進化させることを目的とします.最近では,全二重無線や逐次干渉キャンセラなどの無線物理層技術を考慮したネットワークプロトコル・アーキテクチャのクロスレイヤデザインに取り組んでいます.また,アプリケーション・システム技術は「ネットワークを使ってなにができるか」を考えます.最近では特に,インターネットにおけるユーザ体感品質(QoE: Quality of Experience)を考慮したビデオストリーミング技術や,スマートフォンに代表されるモバイル機器がクラウドと連携したアプリケーションやコンテンツ配信の研究に取り組んでいます.現在の主なテーマは以下の通りですが,これに限らず自由に発想し,大学ならではの中長期的な視点に立った新しい研究にもチャレンジしていきます.

ユーザの体感品質(QoE)を考慮したビデオストリーミング

ミリ波帯の特質を考慮したネットワークプロトコル

複数通信経路の活用

全二重無線通信のためのネットワークプロトコル

新しい無線技術である全二重無線(full-duplex wireless)のためのネットワークプロトコルについて研究開発しています.一般的な無線通信システムでは半二重無線(half-duplex wireless)が使われています.これは,自身が送信した信号を自身が受信することで他端末からの信号に干渉する自己干渉(self-interference)により「送信しながら受信することが難しい」ためです.そのため,同一チャネルでの全二重無線通信は難しいと考えられてきましたが,無線物理層技術の進展により,単一アンテナでの全二重無線(single antenna full-duplex wireless)の実用の道が近づいています.このような無線技術を使って大容量なワイヤレスネットワークを実現するためには,上位層のネットワークプロトコルであるメディアアクセス制御(MAC)や経路制御(ルーティング),トランスポートプロトコルの再設計が必要になります.そこで私たちは,全二重無線通信のためのネットワークプロトコルを考案し,モバイル端末が有機的につながるワイヤレスネットワークの実現を目指した研究に取り組んでいます.

モバイルシステムおよびアプリケーション技術

より便利なモバイルシステムおよびアプリケーション技術について研究開発しています.iPhoneに代表されるスマートフォンの普及は著しく,モバイル端末で高度なサービスが実現できるようになりつつあります.スマートフォンは,GPSや加速度センサ,ジャイロなど多数のセンサを備えています.また,将来にはスカウターなどウェアラブルなデバイスも一般的になると予想されます.そのような進展を見据えると,モバイル端末はもっと高度なことができる必要があると感じます.例えば,モバイル端末では各種センサによりユーザがどのような状況なのかを認識することができますし,そのような多数のユーザの情報をクラウド上に蓄積し,必要な情報を取り出すことで,きめ細かいサービスが実現できる可能性があります.一例として,ヘルスケアや高度なスポーツトレーニングを想定した無線ボディエリアネットワーク(WBAN: Wireless Body Area Network)の研究が挙げられます.私たちは,モバイル端末を省電力化する手法や各種センサを使ったモバイルシステムやアプリケーションの実現を目指した研究に取り組んでいます.

コンテンツ指向ネットワーク

現状のインターネットの問題点を解決するコンテンツ指向ネットワーク(content centric networking)について研究開発しています.シスコ社によると,全世界のコンシューマインターネットトラフィックの半分以上はビデオであり,2016年には54%になる見込みです.既存のインターネットは,コンピュータの住所であるIPアドレスを用いてサーバを指定し,そのサーバからコンテンツのダウンロードを行います.しかし,ユーザの視点に立つと,コンテンツがダウンロードさえできれば,それをどのコンピュータからダウンロードするかは関係がありません.このように,インターネットの使われ方が,電話のような1対1のコミュニケーションから,不特定多数の情報発信者からのコンテンツダウンロードへと大きく変わりつつあるのに伴い,ネットワーク自体のあり方も大きな変化が必要との認識が広がっています.そこで私たちは,IPアドレスを用いずに,コンテンツの名前を使ってネットワークからコンテンツを発見することで,ネットワークの負荷とユーザへのコンテンツ視聴品質を向上させるコンテンツ指向ネットワークの実現を目指した研究に取り組んでいます.